おせち料理の数の子は父のこだわりの逸品。塩抜きから味付けまで5日間!

がんこ~

31歳の女性です。私の家では毎年年末になると母がおせち料理を仕込んでいました。子供の頃からその様子を見て、母を手伝ってきました。父にも手伝うように言ってきましたが、父は全く手伝いませんでした。

数の子は市場までわざわざ買い付け。薄皮を丁寧に剥がし1日かけて塩抜き

おせちの仕込みを全く手伝わなかった父ですが、「数の子」だけは父がとてもこだわって行っていました。その姿には母も文句一つ言いませんでした。父の仕込みは、数の子を購入する所から始まります。スーパーや百貨店で買うのかと思いきや、わざわざ市場まで行って買います。

家族全員早朝に起床し、全員で市場に向かいます。子供だった私は、寒いし眠いしで凄く嫌でした。良い数の子はすぐ売れてしまうので、父の目はとても真剣でした。納得のいく数の子が手に入ると、さっそく自宅で調理開始です。

私が「何か手伝おうか?」と言っても父は無反応でした。食べる時まで触らせてくれませんでした。少しでも手を触れようとすると凄く怒られた事を思い出します。父は、数の子の薄皮を丁寧に剥がし、1日かけて塩抜きをします。つけ汁も鰹節でだしを取り、何度も何度も調味料の加減をしながら作っていました。

数の子を2~3日漬け込んで「まだ、味が染み込んでないな」と言いながら何度も味見をしていました。その姿を見ていた私は、なんでそこまでこだわるのか不思議でたまりませんでした。父のオッケーサインが出てようやく完成です。数の子を仕上げるのに5日間くらいはかかります。その間は父もピリピリしているので、完成するとみんなホッとしました。

出来上がった数の子は味も食感も絶妙。自分で作るも父の味には程遠い

出来上がった数の子をお重に詰めて、おせち料理は完成、元旦を迎えます。父の数の子はしっかり味が付いていて、酸っぱすぎず食感も絶妙でした。私は現在結婚して実家を離れています。主人の実家でお正月を過ごす事もあり、昔の様に毎年父の数の子を食べる事が出来なくなりました。

義母が作ってくれた数の子を食べる事もありますが、やはり父が作った物とは違い、あまり口に合いません。それを考えると、父の数の子はとても美味しかったんだと実感しています。

結婚して一度だけ自分で数の子を漬けた事があります。父に塩抜きの仕方や味付けをを教えてもらい、細かい所は子供の頃から見てきた記憶を頼りに丁寧に作りましたが、父の味にはとても程遠かったです。

子供の頃はこだわり過ぎる父を面倒だなと思った事もありましたが、今はとても尊敬しています。毎年おせち料理を作る時期が来ると、父と市場に行った事が思い出されます。そんな父ですが、なぜそこまで「数の子」にこだわっていたのかを聞くと「好きだから」と言うなんとも単純な答えでした。

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