【おせちの詰め方】重箱の盛り付け方一覧

重箱に入ったおせち

おせち料理が詰められた重箱の蓋を開けると、豪華な食材が美しく盛り付けられていてワクワクします。当たり前のように食べてきたおせち料理には、重箱の詰め方にもルールや意味があるんです

学校や職場で食べるお弁当とは中身だけでなく、詰め方にも大きな違いがあるおせち。今回は、料理の一品一品にも意味があるおせちの詰め方、そのルールや意味について一緒に見ていきましょう。

おせち料理の正しい詰め方

重箱

お正月の定番であるおせち料理は、一般的に20~30種類あります。丹精込めて作られた料理を重箱に詰めるのは、簡単そうにみえて実は難しい作業です。

最近のおせちは、食べる人数によって幅がありますが2~3段重が主流。ですが、重箱には正式な段数があります。おせちの料理を詰める重箱は、正式には5段重が基本。上から5段目は料理を何も詰めず空っぽのまま蓋をします。その理由は、最後の1段には神々から頂いた福を詰めるためと言われています。

重箱におせちを詰める「お重詰め」の作業は、料理の種類や重箱の意味を知ることが重要です。では、一段目のお重詰めから順にご紹介します。

重箱一段目に詰める料理

一の重

重箱は上から一段目を「一の重」といいます。そして、一の重には「口取り」「祝い肴」と呼ばれる料理を詰めます。口取りや祝い肴とは、お祝い膳として吸い物と一緒に最初に出される料理のこと。どちらも本来は、酒の肴になる料理を意味していました。最近は、幅広い年代が楽しめるよう甘めの料理も含まれるようになりました。

一段目の重箱、一の重に詰める口取りの種類と各料理の意味を挙げます。

口取り料理の意味
きんとん金運・商売繁盛
昆布巻き幸運・長寿を願う
紅白かまぼこ幸運を願う
伊達巻学問成就・稽古事の向上

「祝い肴」は、基本的に3種類の料理を指すため、「祝い肴三種」とも言います。一の重に詰める祝いの肴の種類と各料理の意味について挙げます。

祝い肴料理の意味
黒豆健康・長寿を願う
数の子子孫繁栄を願う
関東:田作り
関西:叩きごぼう
豊作を願う

祝い肴の場合、関東と関西など地域によって違いがありますが、田作りも叩きごぼうも1年の豊作を願う料理です。

重箱二段目に詰める料理

二の重

上から二段目の重箱は「二の重」といいます。二の重に詰める料理の種類は、「焼き物」です。おせち料理の焼き物は、魚介類など海の幸がメインですが、野菜や肉料理も含まれます。二の重に詰める焼き物の種類と料理の意味を挙げます。

焼き物料理の意味
鯛(姿焼き・西京焼き・塩焼きなど)開運を願う
ブリ(照り焼き・西京焼き・燻製など)出世を願う
鮭(塩焼き・西京焼きなど)航海など出発の無事を祈る
ホタテ貝(うに焼き・黄金焼きなど)夫婦円満を願う
車エビ(塩焼き・西京焼きなど)健康・長寿を願う
穴子・うなぎ(八幡焼きなど)永続を願う
鶏肉の照り焼き新年一番に鳴く鶏は縁起物
豚の角煮の炙り焼き子宝・財運を願う
牛肉の八幡巻開運を願う
椎茸の塩焼き神に供える縁起物

※黄金焼き
焼き魚の仕上げに卵黄を塗り炙った料理
※八幡巻(やわたまき)
ごぼうを肉や魚で巻き煮焼きした料理

料理の意味は食材によって違ってきます。例えば、生まれた川に戻ってくる鮭の場合、航海など出発の無事を願ったり、長細い姿の穴子やうなぎの場合なら家業や幸運が長く続くようにと願う意味があります。

重箱三段目に詰める料理

上から三段目の重箱は「三の重」です。三の重に詰める料理は、「酢の物」です。おせち料理の酢の物は、主に野菜がメインですが海の幸の食材も含まれます。三の重に詰める酢の物の種類と料理の意味を挙げます。

酢の物料理の意味
紅白なます平和を願う
酢レンコン開運を願う
ちょろぎ長寿を願う
酢なまこ豊作を願う
酢だこ多くの幸運を願う

ちょろぎ

ちょろぎとは、シソ科の植物の根っこ。食用となる部分をシソ酢で赤く染めた酢の物です。ちなみに、ちょろぎは漢字で「長老木」や「長老喜」と書きます。そのため、楽しく長生きできますようにと長寿を願う料理です。

重箱四段目に詰める料理

与の重

重箱の四段目の呼び方は、一~三段目までとは少し違います。おせち料理は縁起物なので、四(し=死)を連想させないよう「四の重」とはいわず、「与の重」(よのじゅう)と呼びます。与という文字には、力を合わせて共に頑張るという意味があります。

四段目の重箱、与の重に詰める「煮物」の種類と料理の意味を挙げます。

煮物料理の意味
里芋の煮物子孫繁栄
レンコンの煮物開運を願う
くわいの煮物出世を願う
ごぼうの煮物豊作を願う
手綱こんにゃくの煮物円満・良縁を願う
梅花にんじんの煮物咲くと必ず実がなる梅花は縁起物
金柑の甘露煮金運・幸運を願う

おせちは宮中の宴会で食べられていた料理が始まりですが、庶民の習慣として広がったのは江戸時代。おせち料理を重箱に詰めるようになったのと同じ時期です。そして、おせちは重箱に詰めることにも意味があります。

・めでたさが重なる ・幸せや福を重ねる

重箱は積み重ねることができるので保管場所をとらない、重ねると豪華にみえるというメリットもあります。また、重箱には蓋があるため衛生面での長所もあります。

華やかに盛り付けるヒント集

盛り付けをするときは、「どこに何の料理を詰める」という昔ながらのルールに従うだけでなく、おせち料理が美味しく華やかにみえることも重要です。お正月にふさわしい料理の盛り付け方のポイントを紹介します。

食材の切り方

飾り切り

おせち料理だからこそ、食材だけでなく切り方にもこだわってみると更に縁起が良くなります。おせち料理に使える「飾り切り」と呼ばれる食材の切り方を挙げます。

人参のねじり梅

・切り方

花型に抜いたら、表面を薄く斜めにカットして立体的に

・意味
梅花にみたてて縁起を担ぐ

亀甲椎茸

・切り方

六角形になるよう端を切る

・意味
亀に見立てて長寿を願う

手綱こんにゃく

・切り方

中央に切れ目をいれて、片側を切れ目に通してねじる

・意味
結び目のようにみえるため、良縁や円満など願う

花レンコン

・切り方

角を落として花の形に

・意味
花が咲けば実がなり、願いが叶う

矢羽根きぬさや

・切り方

先端をV字にカットする

・意味
矢羽根は的を射る縁起物

飾り切りは、見た目や縁起を担ぐだけではありません。食材の断面を増やすことで、味が染み込みやすくなって、より美味しくなるメリットもあります。

料理の盛り付け方

盛り付け方

おせち料理を重箱に詰めるときに困るのは、ゴチャついた盛り付けになってしまうこと。料理の数は多いのに仕切りがないと、せっかくの料理や味が隣同士で混ざってしまいます。仕切りのない、または仕切りが少ない重箱は、市販の仕切り用の器や、お弁当や寿司で馴染みの葉蘭(ハラン)で上手に仕切りましょう。

お重詰めには伝統的な料理の詰め方があります。参考にすると初めてのお重詰めでも、詰めるべき箇所にバランスよく料理を盛り付けられます。昔ながらのお重詰めの方法について挙げます。

お重詰めの方法詳細
市松型3×3に仕切り、1段に9種類の料理を詰める
田の字型十文字に仕切り、1段に4種類の料理を詰める
手綱型重箱を斜めに仕切り、バランスよく料理を詰める
七宝型中央に1種類、周囲に6種類の料理を詰める

おせち料理を華やかで美味しそうに見せるには、メインとする料理の位置を決めることが重要です。例えば、朱色がお正月らしく存在感のあるエビを、どこに配置するか最初に決めると、一段と盛り付けやすくなります。

おせちを皿盛りにするコツ

皿盛り

好きなおせち料理だけを少しずつ食べたい人や核家族には、お重詰めではなく皿盛りする方法もあります。普段使いの食器でも、お正月定番のおせち料理をオシャレにみせるテクニックをご紹介します。

料理の選び方

皿盛りにする場合、重箱に料理を詰めるより盛り付けるスペースが狭いため、あらかじめ料理の数を決めておく必要があります。自宅用であれば好みの料理だけを選ぶ方法もありますが、せっかくのおせちなので出来れば料理選びも、ちょっとこだわりたいものです。

そこで重要になるのが、基本的なおせち料理の選び方。「最低限、この料理があればお正月を迎えられる」という意味の「祝い肴」。三種類ある祝い肴は地域によって多少の違いはありますが、皿盛りでも外さず選びたいところです。

祝い肴:関東黒豆・数の子・田作り
祝い肴:関西黒豆・数の子・叩きごぼう

焼き物や酢の物、煮物や和え物など、食材だけでなく調理法の異なる料理を選ぶことも大切です。料理の見た目だけでなく、香りや食感のバリエーションも増えるので、お重詰めに比べ品数が減る皿盛りでも食べる満足度がアップします。

皿の選び方

皿の選び方

おせち料理の皿盛りには、漆器のお膳などが適しています。一般的な長方形のお膳のほかにも、梅花の形をした縁起の良い梅花盆や半月盆、満月のような丸盆などもあります。

皿盛りは普段使いしている和食器や、真っ白な洋皿でも代用できます。料理の盛り付けは、高低差をつけることが豪華に見えるポイント。そのため、小ぶりのワイングラスやお猪口を盛り皿として活用すると、高低差のある盛り付けが簡単にできます。

また、お正月らしい赤や朱色、料理が映える黒色の食器を選ぶと、皿盛りのおせちも豪華さがアップします。お正月っぽい色の食器が足りないときは、シンプルな皿の下に赤や朱色のランチョンマットや和紙を敷くだけでも、お正月らしい食卓が手軽に演出できます。

まとめ

  • 重箱の正式な段数は5段
  • 料理の意味や色を考えて盛り付ける
  • おせちの皿盛りは普段使いの食器でもOK
  • お重詰めには伝統的な詰め方がある
  • 飾り切りした食材で華やかに盛り付ける

おせち料理の盛り付けは、同じ色目や切り方の食材を隣同士にしないことも大切。理由は、盛り付け方に変化がついて料理がより華やかにみえるからです。一品ずつの色にも気を配って、年初めの楽しみであるおせち料理を美しく盛り付けましょう。