祖母手作りの黒豆はつやつやの絶品。甘すぎずしつこくない味の再現に悪戦苦闘

祖母の黒豆
毎年おせちの時期になると、お煮しめや伊達巻、羊かんなど、個人的に好きなものはできるだけ手作りするように心がけていますが、特に力を入れて頑張ったのは黒豆でした。

黒豆をきちんと炊くのはハードルが高く、ついつい後回しに…

20代前半に読んだ料理本で、「豆をきちんと炊けるのが大人の条件」といったくだりを見かけたことがきっかけで、乾燥した豆を炊くことに凝ったことがありました。単純にそんな大人になりたいと憧れたからです。その時は日本の豆ではないものを煮て調理することに偏っていました。

また、黒豆は当時の自分にとってはハードルが高く、手作りするまでに興味が湧かなかったのだと思います。「そのうち、もっと大人になったら作ってみよう」と、漠然と後回しにしてしまったわけです。

黒豆の炊き方を祖母に習っておけば…食べることに忙しかった自分を後悔

私が後悔しているのは、祖母に黒豆の炊き方を習っておかなかったことです。自分の祖母が作ってくれた黒豆は、皮のやぶれもシワもない、つやつやした「絶品」そのものでした。祖母が生きていた頃は食べる方に忙しく、また、祖母からしてみたら作った物を孫が喜んで食べている姿を見るのがうれしいという気持ちが先立ったのだろうと思います。

買ってきた黒豆では甘すぎて食べられない、味が濃すぎてしつこい、などと生意気なことを言っていたのを覚えていますが、それくらい祖母の作った黒豆は売っている商品よりおいしかったわけです。

「年寄りの味は継承しておかないと損をする」と言った映画監督がいますが、私もまさに同じ後悔をしています。祖母が作った黒豆は「その家の味」とでも言うのでしょうか、身内のひいき目が働いていたとしても、よその黒豆では代わりが務まらないと思うからです。

祖母の味には及ばないものの、苦労した手作りの黒豆は家族から絶賛

黒豆を手作りする際に私が参考にしたレシピは、土井勝氏が考案したものです。おせちに出すものを作る前に、書かれている通り忠実に、5回練習しました。「自分の味を出したいから」などと簡単に考え、調味料はきっちり計るという原則にどうしても逆らいたくなるのですが、レシピ通りにした方が上手にできることを思い知らされました。

大変だったのは、アク取り後に炊く時の火加減で、「ごく弱火」と書かれてあっても、その程度を見極めるのに苦労しました。コンロの火では納得が行かない出来になったのと、コンロの前に張り付いていなければならいのが地味にツラかったです。

そこで思いついたのは、だるまストーブの上に黒豆のお鍋を置いてしまうことでした。その横着が思いのほかうまく行き、祖母の味にはまるで及ばないものの、豆の皮の破れどころかシワもなく仕上がり、作った自分も驚きましたが家族から絶賛されました。

「祖母の黒豆を自分でも作りたい」という情熱や執念が実を結んだのかなと思いました。祖母の味の復元には一生かかっても辿り着けないとしても、年々上達していけるように来年ももちろん手作りに挑戦します。

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